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SPOONのLSDをチェック

SPOONのLSDを弄る機会があったので、これ幸いとばかりに3号車のクスコ・1wayRSとどこが違うのか、じっくりと観察してみた。

気を取り直して。。。
とりあえず邪魔なものを

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部品構成からイキナリ差を付けてくれる。サイドベアリングとリングギア取付ボルトが付属しているのだ。こういった細かい配慮には頭が下がる。ところが・・・説明書が付属していない(--;当然オーナー氏はSPOONに問い合わせるが、「もともと無い」そうな。そんな言い訳、信用できますか?

取っ払ってミッションを

降ろしてケースを

開けて、と。ここら辺は省略。
これが標準のヘリカルLSD。「ソーセージ」が噛み合っているのが窓から見える。ベアリングはテーパーローラーではなくボール。3号車ではこのベアリングは外してクスコに再使用したのだが、圧入されていて(−)ドライバー2本ではベラボーな時間がかかった^^。素直にベアリングプーラーを使いましょう。。。
反対から見るとこうなっている。スピードメータードライブギヤは脱着可能(当たり前か)。
こちらがSPOON。オイル通路からコーンスプリングが見える。
それでですねー。スピードメータードライブギヤ、一体式なんですよ。ちなみにクスコRSは脱着可能なタイプ。こんな場所、破損、しないよね。多分。。。
反対側から。この蓋は4本のネジで仮止めがされている。ヘキサゴンレンチを使って外すのだが、単なる(+)ネジでも良いのでは?クスコRSもこのタイプ。
蓋を外すとイキナリこれだけ持ち上がる。この隙間がイニシャルトルクとなって現れる。新品時で2.3mmあった。クスコRSは2.5mm。
イニシャルトルク発生の立役者、コーンスプリング。大変アバウトで恐縮だがノギスで計測したところ、厚さは1.75mm。ただしこの様にすると3.0〜3.1mm。1枚当たり1.25〜1.35mmのストロークを持っている。これが2枚入っているのでトータル2.5〜2.7mmとなる。上の計測結果から照らし合わせると、ほぼ目一杯圧縮されている事が分かる。これが次回O/Hする時の貴重なデータとなる。
次にクラッチプレート。厚さ1.6mm。クスコRSも同じ。内ヅメの形状は丸い。応力が分散されそうで、好感が持てる。調整用シムは1.0mm。

オイル溝はほぼ直角に交わる。限界まで接触面積を減らし、油膜を切りたいという気持ちが伝わってくるが、特に内ヅメの方は蚊取り線香のようにバラけてしまわないのだろうか?クスコRSは両方とも斜め放射状に切られていた。
プレッシャーリングの角度はこんな具合。3号車は完全1wayに拘ったので、左側は真っ直ぐに切り落とされている。
クロスシャフトはだ円形。普通はこういう格好をしているんですよねぇ。。。
ベアリングを付けるとオイル穴の半分は埋まってしまう。クスコRSも同様。
先の画像と見比べられたい。リングギヤの裏表が逆になるだけでなく、取付ボルトも手前から奥に向かって付くのだ!!リングギヤの高さに合わせるため、工具の掛かりが異常に浅い。因みにこのボルト、ノーマルでは左ネジ(!)に対してSPOONは右ネジ。

「熟練者が取付けるのか?」とSPOONはオーナー氏に聞いていた様だが、つまりこの部分を気にしていたのね。。。
EK9の細かな配慮。エンジンとミッションの取付剛性を上げるためのガセット部分。3号車はタイプRでは無いので細〜いステーなのだが、こちらは非常に強そうだ。
最強のクラッチ芯出しツール。遊んでいる場合では無い!!でも・・・遊ばせてよ。せっかくだし。。。クラッチはノーマルのノンアスなのでフライホイールとの当たり面は非常に綺麗。

何でこんな部品が有るかって?3号車のものなんですが、そのうちアップできればいいですね。そのうち(^^;
2つの製品を比べてみて、これほどまでに違いが有るとは驚きであった。クスコRSが特殊すぎるというのも有るが、私は完全1wayである事、それにコーンプレートに代わってコイルスプリングを使用しているという構造的違いに興味を持ち、こちらを選択した。じゃあ何でソチラの画像をアップしないのか?といえば、

当時デジカメを持っていなければHPも持っていなかった

わけです。まさかそのためだけに3号車のミッションをO/Hする筈も無く、アップのしようが無い訳なんですよね^^。

FFに機械式LSDは必要なのか?といった声が聞こえてきそうだが、こればっかりは着けた本人にしか分からない。街中専用車に着けるのであれば百害あって一利無しだが、「タイヤが向いた方向に車が進む」とはこういう事なのか!!という意味が良く分かる。いくらフロントに荷重をかけてコーナーに侵入しても、脱出でスロットルを開けてからは内輪が空転するばかりだったのが、グイグイ引っ張ってくれる。横Gで首が持って行かれる!ヘルメットの重さを感じる!こんな経験はカートに乗って以来だ。

水を差すようで恐縮だが、フロントに加重をかける事をある程度マスターしてからでなければLSDは、なるべくなら使って欲しくない。車に乗せられているような感じになるし・・・。私は2号車(シビックEF9)で34GT-Rを追いかけ回した事が有るので、余計にそう思う。曲がらないのを車のせいにしてもねぇ。

それともう一つ。デフとは本来、左右のタイヤの回転差を吸収してくれる大変ありがたい存在なのだが、これを規制し、回転差を限りなく同じにするのだからどこかに無理が来る事を肝に銘じる必要が有る。

デフが負けている段階ではバキバキ音(チャタリング)が発生するが、ロック率が上がって左右のドライブシャフトが1本の棒と化すと今度は盛大なスキール音と共にタイヤが滑る(現在の3号車がこの状態)。

ノーマルラジアルが滑るから、と今度はSタイヤを着ける。そうすると・・・

クラッチが滑り始めることになる、はず。。。

クラッチが滑るから、と今度は強化クラッチを着ける。そうすると・・・さすがのSタイヤも滑り始めるかもしれない。じゃあスリックにしますか!なーんてやってるうちに・・・

ミッション本体やドライブシャフトが逝ってしまったりして。

水漏れ、オイル漏れと同様、弱いところ、弱いところがイッてしまうので、部品屋が儲かるというスバラシイ悪循環となる^^。この車のクラッチが降りていたのはそういった意味を含めての点検だったのです。単純に遊んでいた訳ではございませんで。。。

点検ついでにもう1つ。このデフ、ただ単に取付けるだけであればいちいち各部の寸法を測定したり、クラッチを降ろすなんて事をする必要は無い。時間の無駄。非効率この上ない。しかしながら目先の早さ云々ではなく、将来を考えれば必要である事がお解かり頂けると思う。3号車のクスコRSの時なんて、まさか私がHPを持ってこの様な事をするなんて全く考えていなかった。その時には既に新品をO/Hし、データを取っていた。誰に伝える訳でも無いのに。今回のデータをオーナー氏に伝えたところ、喜んで頂けたようだった。

イニシャルトルクと作動トルクについて。
雑誌などを読んでいると、どうにも間違いだらけで気になることがある。イニシャルトルクを上げたら効きが良くなっただの、作動タイミングを早めたければプレッシャーリングの角度を変えろだの、まるっきりデタラメな表現がそこら中に出回っている。先の画像でもお分かりの様に、ロック率(つまり効きそのもの)の上限を変えたいならプレッシャーリングの角度を変えることになるし、デメリットを無視してでもロック率の上限に達するまでの時間(作動タイミング)を短くしたいなら、コーンスプリングが完全に潰れた時点から効き始めるのだから、予め目一杯圧縮しておけばいい。イニシャルトルクを変えたら効きが良くなった??全く意味不明(--;

前置きが長くなりすぎました。皆さんの中にも機械式(つまり定期的にO/Hしなきゃいけない面倒くさい)LSDを着けてる人は多数いらっしゃるかと思います。そこで質問です。ショップ等で取付を依頼した場合、こういったデータは果たして皆様のところに行くものなのでしょうか?(やるわけねーだろ!!ってガチな突っ込みはナシで^^)

ああ、もう1つあった。ここまで読んでくると「イニシャルトルク何キロ」とか「イニシャルトルク測定用工具」などというものがばかばかしく思えてきませんか?プレッシャーリングの角度が決まっていれば、先に出てきた「最大ストローク量」「新品時の隙間」「新品時のフィーリング」の3つを考慮に入れて、O/H時に「隙間は何mm」と指定すればいい訳ですから。